事例紹介
いかにして、膨れ上がった在庫をさばくか。「学校給食」という新たな販路開拓への取組。
熊本県海水養殖漁業協同組合
熊本県
取組E
学校給食への食材提供

コロナ禍で魚の行き場がなくなり、単価は半値まで下落した
私たち熊本県海水養殖漁業協同組合は、専門漁協ならではの養殖に特化したノウハウで組合員への飼料などの供給から生産魚の加工・出荷まで、一貫した生産管理を実施しています。具体的には「購買事業」、「販売事業」、「加工事業」、「指導事業」の4つの事業を手掛けています。中でも、組合員の生産した魚を販売するというのが一番の目的で、加工などによる付加価値の高い魚を販売していくことに力を注いでいます。
今回のコロナ禍の影響は深刻でした。通常であれば、組合員が生産した魚は主に市場、外食産業向けに出荷されていますが、コロナ禍で魚の行き場がなくなったのです。在庫は1.5倍に膨れ上がり、単価は半値ぐらいまでに落ちるというダブルパンチ。まずは在庫の魚をさばく必要がありました。在庫を売り切らないと組合員の経営が成り立たない。そこで今回の販路開拓事業にエントリーしたわけです。
天草の海で育ったブランド鯛、26万食を学校給食に提供

農林水産省の補助事業を活用し、新たに学校給食という販路の開拓に取り組みました。熊本県下全域の小・中学校521校に約26万食分を、9月と10月に提供。提供した魚は真鯛です。当地では「天草さくら鯛」と呼ばれているもので、天草の海で育ったブランド鯛。
組合員の多くが生産に力を入れている魚であり、コロナ禍で膨れ上がった在庫もこの真鯛が多数を占めました。今まで学校給食では外国産の魚が使われることが多く、国産、ましてや地元の魚が提供されることはありませんでした。今回真鯛を提供し、子どもたちからは「とてもおいしい、また食べたい」という多くの声を聞いています。そういった声に今後も応えていきたいと思っています。
ただ学校給食というのは、食材納入業者が決まっています。そこで、丁寧に打ち合わせを重ねることで当組合の事業に理解・納得をいただき、日々学校に配達されているルートを活用させていただくことができました。
国産のおいしい魚を学校給食に。今後も定期的に取り組んでいきたい

新たな販路開拓により、現在は在庫状況はほぼ通常通りに戻りました。この取組によって、組合員からも「ストップしていた在庫が動き出し、出荷できるようになった」という喜びの声をたくさんいただいています。
私たちはこれまでも事業の一つである「指導事業」の一環として「食育」活動に取り組んできました。今回の取組も販路開拓のみならず、次代を担う子どもたちへの「食育」の場の提供と考えています。事業実施に当たっては、生徒に天草の漁業について伝えるプリントも作成・配布しました。
「天草ブランドの養殖魚」のおいしさを各地に広め、食料や食生活を大切にしようとする心、そして地元の食材に愛着を持つ気持ちを育てていきたいと考えています。そのためにも、今回開拓した学校給食という販路での養殖魚提供を今後も定期的に取り組んでいきたいと思っています。そうして少しでも多くの子どもたちに国産のおいしい魚を食べてもらい、笑顔になってもらいたいと思います。