事例紹介
コロナ禍で低迷した消費意欲を回復するため、「ぐんまの牛肉」で「美味しい時間を楽しむ」イベントを開催。
鳥山畜産食品株式会社
群馬県
取組D
創意工夫による継続的な販路の開拓

コロナ禍による消費者の意識の変化、部位別在庫のアンバランスが加速
当社は、農家から肉牛を買い付けて販売する家畜商として1948年に創業しました。その後業容を拡大して牧場経営に乗り出し、和牛生産を繁殖から肥育まで一貫して行う生産体制を整えてきました。現在は「赤城牛」ブランド確立に向け、肉牛生産から食肉加工、商品開発、国内・海外販売と幅広く事業を展開しています。
コロナ禍により当社取引先である、小売店、外食店、観光施設などでは売り上げが大きく減少しました。取引先でのヒアリングでも「コロナ禍で2年以上制限のある生活をせざるを得ない中で、最終消費者の外食や旅行の楽しみ方への認識が変わってしまった」という意見が多く聞かれました。何らかの対策を打たない限り、消費意欲は容易に回復せず、以前のレベルには戻りそうにありません。当社が生産者から仕入れた枝肉の在庫量も増加しており、このままでは買い支えることが困難になる恐れもありました。生産者を守り、県内の肉用牛生産を維持するための一手として、販路開拓事業の活用を決めました。
牛肉13部位の新たな魅力、美味しさを発信するキャンペーンの実施

消費意欲を回復させるためには、消費者に「外食したい、宿泊したい、牛肉を食べたい」という関心を抱いてもらう機会創出が必要になります。そこで今回の事業を活用して、生活行動を変え得る内容の強いインパクトを持つイベントを開催することで、外食や家庭での「美味しい時間を楽しむ」機会の増加に繋げていく取組を実施しました。
具体的には小売店・飲食店向けに牛肉13部位の新たな魅力発信方法を企画考案し、新メニュー(部位)での販売を依頼。当社で食べ方レシピを配布しました。たとえば、最も肉の味を楽しめる「リブロ―ス」。部位全体の使い方だけでなく、部位の一部を構成する希少部位の味・食感の特徴やメニュー活用法を案内しました。
これら展開にあたっては、参画事業者(小売店・飲食店22社)と連携して、「ぐんまの牛肉 美味しい時間応援キャンペーン」を実施。参画事業者と協業し新メニュー・新規格商品の開発を行いました。各店舗ではポスター、のぼり旗、パンフレット、インスタグラムなどによるPR活動で、「ぐんまの牛肉」の美味しさを消費者に訴求。消費者が牛肉をモノとして認識するのではなく、食べて「美味しい」と体験してもらうのが狙いでした。
こうした創意工夫の取組によって、新規外食店の販路開拓に繋がりました。新たな取組であった牛肉13部位の販売展開で、部位別の在庫アンバランスも正常化しつつあります。また、今回の事業をきっかけに(株)パン・パシフィック・インターナショナルホールディング様が、シンガポールで展開している「DON DON DONKI JEM店」「DON DON DONKI Waterway Point店」に群馬県産牛肉を新たに採用。事業取組のうれしい副産物として、海外にも新たな販路を開拓することができました。
イベントを定期的に継続実施し、一層の消費喚起に繋げていきたい

今回の取組は事業実施者である当社、参画事業者、調達先との連携で実施しましたが、各社に取組の一連の流れを説明し、理解していただく点に非常に苦労しました。通常であれば価格訴求での販売もありますが、今回はそうではありません。「美味しさを伝える」という目的を共有して、ベクトルを合わせることに力を注ぎました。
また今回は、枝肉(皮や内臓、頭、肢端、尾を取り除いた状態の肉)から切り分けた13の部位をどう販売していくかがポイントでした。参画事業者と打ち合わせを重ね、新メニューや新規格商品を提案。枝肉加工後のフローを構築していきました。
今回の取組実施によって、「赤城牛」のような高級牛肉は家庭でも楽しめるという思考変化が消費者に生まれてきたと感じています。キャンペーンの定期開催を希望するバイヤーも少なくなくありません。今後も季節ごとにイベントを定期的に継続実施していくことで、さらなる消費喚起に繋げていきたいと考えています。