事例紹介
養殖魚生産業者の苦境を打開するために、「鹿児島産ヒラマサ」の全国規模の販路開拓。
株式会社マルイチ産商
長野県
取組D
創意工夫による継続的な販路の開拓

外食需要の低迷によって苦境に立たされた養殖魚生産業者を支援するために
当社は、1951年に(株)長野中央魚市場として、水産物の卸売事業を開始しました。その後、水産市場を長野県内各地に展開し、1986年に(株)マルイチ産商に社名変更。長野県外へ本格的に進出し全国に商圏を拡大しております。現在は、水産物のみならず総合食品卸売業として畜産物や加工食品など多種多様な食品を取り扱っています。また卸売業に留まらず、「メーカー型卸」として原料調達から加工、商品化に至るまで、流通のあらゆる場面で食品と関わり、マーケットイン型流通の実現を目指しています。
今回のコロナ禍の影響で外食業界は大きな打撃を受けました。それによって、外食業界向けに水産物を提供している養殖魚生産業者の経営も苦境に立たされました。養殖魚生産は、生産と販売計画に基づき魚を育成していますが、コロナ禍で販路が途絶えたことにより滞留。すぐに生産量を調整できるものではなく、当社取引先である鹿児島県内の養殖魚生産者も非常に厳しい状況に陥りました。その状況を打開するためには、養殖魚の販売促進を行うと同時に、新たな販路開拓を行う必要がありました。
全国350店舗を持つ量販店と連携し、販促キャンペーンを実施

新たな販路開拓に取り組んだのが、コロナ禍の影響を強く受けた魚種の一つ「鹿児島県産ヒラマサ」です。この魚はこれまで九州、四国、山陰が消費の中心であり、水産市場を通じた業務用、外食業界向けの「活魚ラウンド(丸魚)出荷」を主要販路としていました。養殖魚の中でも外食需要低迷の影響が大きかった魚種です。
今回の取組は関東圏であまり馴染みのない「鹿児島産ヒラマサ」の販売エリアを全国規模(関東、甲信越、北陸、中京、関西、中四国)で展開するために、従来業務用・外食向け中心であった販路に依存せず、一般消費者向けの販路を開拓することでした。
具体的には、全国に流通販売網を持つ当社と全国各地に広く店舗を展開する大手スーパーと連携し、350店舗に及ぶ店頭において「鹿児島県ヒラマサ」のPR販促キャンペーンを実施。「鹿児島県産ヒラマサ」に「フィレ加工」を施した上で新しい販路に積極的に流通させ、持続的な流通スキームを実現することで、コロナ禍で困窮している養殖魚生産業者の養殖生産サイクルの健全化、経営の安定化に寄与することが目的でした。
レシピ開発による新しい「食べ方」の提案が購買意欲を刺激

「鹿児島産ヒラマサ」に馴染みのないエリアの消費者にいかに購入していただくか、それが新たな販路開拓のための重要なポイントでした。鮮度感と美味しさを訴求することは当然なのですが、やはり重要なのは「食べ方」。そこで、「鹿児島県ヒラマサ」のレシピをクッキングコーディネーターと共同開発し、当社ホームページ上で掲載。
さらに、店頭売場に設置する販促POP記載のQRコードと連携し、消費者に広く食べ方を提案する売場づくりを展開しました。レシピは、魚=和食の概念を払拭しオリーブオイルを使用した洋風の簡単・健康増進レシピ(カルパッチョやガーリックソテー、ペペロンチーノなど)を開発、若者世代を含む幅広い年齢層の消費者にアピールしました。
このレシピ提案は非常に有効だったと思います。「食べてみたい」「料理してみよう」と消費者の購買意欲が向上したのか計画よりも早く売り切る店舗もあり、販売拡大に繫がりました。また養殖魚生産業者からも「(新しい販路開拓を)やってくれてありがとう」「生産の見通しができて良かった」という嬉しい声が届いています。今後「鹿児島産ヒラマサ」については、将来的にプライベートブランド化展開を検討するなど、販路定着化を図っていきたいと考えています。またレシピ開発については事業終了後も継続し、定期的な食べ方提案(レシピ提供)を当社ホームページ上で行っていく考えです。
今回は「鹿児島産ヒラマサ」を取り扱いましたが、今後機会を見つけて他の魚種でも同様の取組を展開していきたいと思っています。