事例紹介
コロナ禍による飲食店休業でジビエの販売量が激減。ECサイト構築による販路開拓の試み。
株式会社tracks
福岡県
取組A
新規サイト構築等の取組

コロナ禍がもたらした災禍の一つ、飲食店休業によるジビエ販売量激減
当社は2012年、猟師を中心に福岡・糸島で結成されました。元々は、イノシシ、シカなどの鳥獣被害を防ぐためにスタートしましたが、現在は資源の有効活用の意味も含めて、地元で獲れたジビエ(食材となる野生鳥獣肉)の加工や販売、飲食店の運営を行っています。
ジビエの販売自体は飲食店などの事業者向けの卸販売がメインでしたが、コロナ禍の影響で飲食店の休業が相次ぐ中、販売量は3分の1まで激減してしまいました。私たちは猟師さんが獲ったものを受け入れ食肉加工しているわけですが、抱えられる在庫量には限度があり、猟師さんからの受け入れも断らざるを得ない状況になったのです。
一般消費者向けのECサイトに加え、新たに事業者向けのサイトを構築

そうした状況の中、ジビエの販売量を確保する新たな試みとして、2021年1月から、ECサイトを利用した一般消費者への小売販売を開始しました。一定の反響はありましたが、1件当たりの販売量が1kg未満と少量で、当初は大幅な販売量増加には至っていませんでした。しかし継続していく中で、開始当初の2021年5月と比較して、1年後の2022年5月に販売量は2.5倍に増加。
ECサイトでの販売に手応えがあったことで、今回、販路開拓事業で私たちが取り組んだのは、休業や時短営業から通常営業に戻りつつある飲食店等の事業者に向けた専用のECサイトを新たに構築し、販路を新規開拓するという試みです。
ECサイト構築にあたって私たちが大切にしたのは、自社ホームページと連動し、会社の根幹である「里山を守ろう」という想いを伝えること。人と動物が共に生きる暮らしの循環を再構築して失われた里山を取り戻す、そして山を想い、命を尊び、その命に感謝してジビエを食卓に届ける――。
実際のECサイト構築は外部に委託しましたので、私たちのそういった想いを理解してもらい、サイトで表現することに力を注ぎました。送料支援を受けていることをお知らせするキャンペーンのバナー広告を掲載するなど、サイト自体のプレビュー数確保による販売量増加に取り組みました。
新規の販路開拓60件を達成、定着化に向けた活動を推進

今回の取組で目指したのは店舗業種向け・卸販売先の新たな販路開拓でした。専用ECサイトによる商品訴求を展開した結果、事業期間中に目標とした新規の販路開拓60件を達成。Googleの広告で約200万回表示され、1.5%がECサイトに来訪し、そのうちの約20%が販売に繋がっています。
販路開拓事業は一定の成果を上げましたが、事業終了後も販路の定着化に向けた活動を推進しています。たとえば、EC会員登録による顧客情報の取得と囲い込み、会員登録顧客に対して、ジビエの季節商品や新商品の案内、キャンペーン情報をメールや公式LINEを通じて発信し、再利用を促す取組も開始しました。また、事業終了後も当社の自己負担による送料支援や季節に合わせたお得な商材キャンペーン告知にバナー広告などを利用し、新規顧客の獲得を図っていく考えです。
今後はECサイトの活用によって、現状年間4tの生産量を6tに拡大することを目標としています。そして、新規顧客を固定客化することでジビエの流通量を増やし、当社の事業運営の目的の一つである野生鳥獣による農林被害の減少に貢献していきたいと考えています。